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Friday, December 25, 2020

山陰中央新報社|有名建築家作の市庁舎どうする? 江津市、活用策決まらず - 山陰中央新報

新庁舎移転後の活用策が定まらない江津市の現庁舎=江津市江津町
 新庁舎への移転新築に伴い、来年5月に役割を終える島根県の江津市庁舎(江津市江津町)が、巨大な空き家になる可能性が出てきた。民間主導で施設を再利用する動きはなく、財政難の市も改修による新たな公共利用に踏み切れないのが理由。市民から有名な建築家が設計した市のシンボルを保存活用するよう求める声があるものの、廃館まで半年を切っても方向性が定まらない。

 現庁舎(鉄筋コンクリート8階建て、延べ4122平方メートル)は、世界的建築家ル・コルビュジェに師事した吉阪隆正氏が設計。橋桁を思わせる斬新な建物が、市の象徴として中心部に鎮座してきた。だが1962年の建設から半世紀以上がたって老朽化が目立ち、耐震上の問題もあるため、移転新築が決まった。

 近代建築として高く評価された建物を保存活用するよう求める建築関係者らの声を受け、市は2019年度に東京、岡山で民間業者向け説明会を開き、アイデアを募った。市によると計6社が関心を示したものの、改修工事費の負担割合などで折り合わず、協議は進展していない。

 市内には従来から、図書館としての活用を求めるニーズが根強くある。築46年の市図書館が老朽化し、手狭なためで、19年度の意見募集でも、保存活用を求めた市民ら64人の半数が図書館転用を希望した。

 だが、改修には内外装費や設備費で10億円程度がかかる。新庁舎建設に約40億円を投じ、今後も小学校新築などの大型事業を控え、厳しい財政見通しから具体化していない。

 新庁舎移転まで半年を切る中、市は21年度以降、識者らの第三者機関を立ち上げ、建物を詳細に調査する検討を始めた。市の山本雅夫建設政策課長は「職員がいなくなってから建物の耐用年数などを改めて調べ、新用途や耐震改修の可能性を探りたい」と話した。

 JR江津駅近くにある旧市民会館が17年から空き施設となっており、来春から中心部に巨大な空き家がもう一つできる。景観や治安上の問題も懸念され、山下修市長は「市民の声や財政状況を総合的に勘案し、21年度中には結論を出したい」と対応を急ぐ考えだ。

 仮に庁舎を解体し、更地にする場合の費用は2億円程度。財政面のみを考えれば最も楽な選択肢だが、踏みとどまって保存活用の道を模索してきた。建物の詳細調査を機に、将来の町づくりにとって活用、解体のいずれが最良なのか、市民挙げた一層の議論がいる。

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