イギリスの情報機関MI6の元職員で、冷戦時代に旧ソビエト連邦の二重スパイとなったことで知られるジョージ・ブレイク氏が26日、亡命先のロシアで死去した。98歳だった。同国メディアが報じた。
ブレイク氏は9年間にわたって、東欧にいたMI6職員40人以上の情報をソ連側に渡した。
1960年にロンドンの刑務所に収監されたが、1966年に脱獄し、ロシアに逃亡した。
ロシアの対外情報庁はブレイク氏について、「私たちの国を真に愛していた」と述べた。
ウラジーミル・プーチン大統領も弔意のメッセージを発表し、「特別な勇気と忍耐力をもった傑出したプロだった」とブレイク氏を表現。
「彼は長年にわたる懸命の努力によって、世界の戦略的均衡と平和を保つため、真にかけがえのない貢献をした」、「この伝説的な人物は人々の胸に、よき記憶として刻まれるだろう」と述べた。
500人以上の情報をソ連に
ブレイク氏は1922年11月11日、オランダ・ロッテルダムで生まれ、ジョージ・ビハルと名づけられた。
父親はスペイン系ユダヤ人で、第1次世界大戦でイギリス軍と共に戦い、イギリスの市民権を得た。
ブレイク氏自身は、第2次世界大戦中にオランダのレジスタンス運動に参加。その後、イギリス領ジブラルタルに逃れた。
その生い立ちや経歴から、MI6で働くよう誘われた。
ブレイク氏は1990年のBBCのインタビューで、西側の情報機関職員500人以上を裏切ったと述べた。しかし、その結果42人が命を奪われたとの見方については否定した。
BBCのゴードン・コレーラ安全保障担当編集委員が10年ほど前に接触した際には、「私の動機が理解されるかどうかは、もはや私にとってあまり重要ではない」と述べた。
脱獄は劇の題材にも
ブレイク氏が二重スパイだと発覚したのは、ポーランドの諜報員ミハル・ゴエニフスキー氏が西側に亡命し、ソ連のスパイに関する情報を英情報機関にもたらしたのがきっかけだった。
ロンドンに呼び戻されたブレイク氏は、その場で逮捕された。裁判では、ソ連に5件の情報を渡した罪を認めた。
ロンドンのワームウッド・スクラブス刑務所からの脱獄は、スティーヴン・フライ氏とリック・メイヨール氏主演の1995年の劇「Cell Mates」のモデルとなった。
2015年のBBC制作のドキュメンタリー「Masterspy of Moscow」は、「謎多き裏切り者」の「奇妙な生涯」をなぞった。
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