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Thursday, November 19, 2020

小国がゆえに海外に挑み、大国となって閉じこもる 第9回【グローバル化①・前編】 - 日経ビジネスオンライン

プロローグ:漱石の嘆き


夏目漱石(写真:ユニフォトプレス)

 本当に最近は「国家」がどうだ「日本人」がどうだと、うるさくて敵わない。

 江戸・牛込馬場下町の名主の家に生まれたが、明治維新の混乱に巻き込まれてすぐに里子に出された。姉が救出してくれたが、それからも出されたり戻されたり。望まれずに生まれた末っ子五男の人生なんて、暗くて冷たいものだった。

 頭が良かったお陰で、帝大を出て職も得たが、イヤになって松山に逃げて高校教師になった。33歳で官費留学生となったが、ロンドンの大学にもさして学ぶものはなく、下宿屋で神経衰弱になっただけだった。

 いや、学びはあった。それは「西洋人の言うことに盲従・受け売りしても意味はない」「自分自身の意見を持たねばならない」ということ。イギリスという国は大変自由を尊ぶ国であるが、あれほど秩序が行き届いた国もない。子どもの頃から自分の自由を愛するとともに、他人の自由も尊ぶように教育を受けてきたからだ。ゆえに個人が政府を非難したからといって、警察がそれを取り締まったり警官が家を取り巻いたりすることもない。これこそが個人主義というものだ。

 しかし今、日本は「国家」に取り憑かれている。「日本人」たるもの国家を第一に考えよと喧しい。確かに今の日本は小国で貧しい。だからと言ってすぐ大国にと焦ることもない。誰しも、自国が存亡の危機になれば自然と国のことを考えよう。その程度で良いのだ。

 そう言えばもうすぐ学習院輔仁会(*1)での講演会だ。病気でずいぶんと先延ばしにしていたけれど、90分も学生さん相手に何を話そうか。裕福で、将来自然と権力を握るであろう彼・彼女らに、紆余曲折の人生を歩んできた私が伝えられることはなんだろう。

 1914年8月、『こゝろ』の連載を終えた夏目漱石に残された時間は2年余り。47歳になった彼は、その厳しい闘病生活の合間、愛猫「ねこ」とともにしばしの休息を楽しんでいた。

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