豊富な機種が店頭を彩る、完全ワイヤレスイヤホン。
「EARIN」や「AirPods」の登場からだいたい5年の歳月が経って、市場のスタンダードになった。いまやワイヤレスイヤホンと言えば、左右独立型が当たり前。“単にケーブルがない”というだけではアピールしにくい状況もある。間が線でつながっている機種を見たら、「確かに昔はそんなんだったねぇ……」なんて、遠い目をされてしまうことのほうが多そうだ。
もちろん、ネックバンド型やヌードル型(左右をつなぐケーブルがきしめんみたいなので)のBluetoothイヤホンにも注目すべき機種はある。とはいえ、オススメする際には「完全ワイヤレスの○○よりもココが優れるからコレ」みたいな“ただし書き”が必要だろう。
当たり前の中で、何で差別化するか?
いまは、完全ワイヤレスの中でも納得できる差別化ポイントが必要だ。「ここらでひとつ、機能や使い勝手の面でもブレークスルーが欲しいよね」というのが、ガジェット好きの率直な感想だろう。
接続の安定性や連続再生時間の面では、だいぶ改善が進んできた。人によっては好みに合った音質、あるいは高級機で増えてきているアクティブ・ノイズ・キャンセリング(ANC)などを挙げると思う。そんな中、割と切実なのは紛失対策だと思う。
そこにいち早く取り組んできたのが、Tileという紛失防止タグをイヤホンの中に内蔵したスカルキャンディだ。
もともと「Venue」や「Crusher ANC」といったヘッドホンにTileを取り入れてきた同社。今年に入って「Push」「Indy」「Sesh」といった完全ワイヤレスの各シリーズにも、積極的にTileの機能を搭載してきた。国内での販売もこの夏から始まっており、「なくしたくないなら、スカルキャンディがいいかもね……」といった状況が生まれつつある。
ちなみにTileは、「外出先で落としたかも……」という状況で、「どのへんで落としたか」を知るのに有効だが、「さっきまで着けていて、家の中に絶対あるはずなんだけど、どうしても見つからない」といった場合にも、ブザーで位置を知らしてくれて便利だ。
有線タイプやネックバンド型のイヤホンとは異なり、完全ワイヤレスは耳から外した際に、無意識にポケットに入れたり、机や棚の上に置いたままにしてしまったりしがちだ。そして、小さいので見つけにくい。その際に大慌てで周囲をひっくり返して、時間をロスするのが嫌だという人にもオススメしたい。
ケースを省サイズ化し、音質・機能も格段に強化された
そんなスカルキャンディの新イヤホンの中から、この記事で紹介するのは「Indy Fuel」という製品だ。Tile搭載の完全ワイヤレス機としては、ほかに「Indy Evo」「Sesh Evo」「Push Ultra」といったものがある。Indy Fuelは、Indy Evoをベースにワイヤレス充電機能を追加したものと考えればいい。
Indy Fuelは現在、クラウドファンディングサイト「GREEN-FUNDING」で限定予約販売を受付中。国内では、量販店などでは入手できず、ここだけで手に入るレアものとなっている。価格は税抜で1万円程度からなので、著名ブランドの完全ワイヤレスイヤホンとしては安価な部類に入るはずだ。
Indy Fuelの特徴について、簡単にまとめよう。
まず、昨年国内投入された「Indy」の機能強化モデルで、価格はそれほど変えず、多機能化と高音質化に取り組んでいる。Tileへの対応だけでなく、機能・音質についても大きく改良しており、まったく新しい機種と考えてもいいほどだ。連続再生時間は本体のみで6時間(充電ケース併用で合計30時間)に延長。一方でケースは20%スリム化。急速充電に加え、ケースはQi規格による非接触充電にも対応しており、充電もワイヤレスとなっている。
本体はIP55相当の防水防塵性能となっており、汗やアウトドアでの利用にも強い仕様。マルチイコライザー、アンビエントモード(外音取り込み)機能なども新たに追加された。EQはPodcastや映画用のモードを用意している。BluetoothコーデックもSBCに加え、iOS機との連携で有利なAACに対応する。
価格を考えると、機能面での充実ぶりが感じられる内容になっている。また、これから書くように音質についても、かなり完成度が高い。ストリートなテイストやドクロマークにひかれてスカルキャンディに興味を持った人はもちろん、音がよくて高機能な完全ワイヤレスを探しているが、予算は抑えたい人にも魅力的な選択肢になっている。
ボーカルの聴こえがいい! 低域もズーンと沈み込む
さて、Indy Fuelの国内出荷は9月から順次始まるそうなのだが、サンプル機を先に試す機会があったので、音質や使い勝手について触れておこう。
まずは質感。ケースや本体は樹脂製で、最近の高級機種と比べると質感は少し譲る面があるのだが、中央に指がかりがあってホールドしやすい形状になっていたり、多少大きめのイヤーチップを入れても入りそうな余裕のあるケースになっていたりと、なかなか考えられている印象だ。
SkullCandyの米国本社グローバル営業責任者・ブライアン氏によると、Fuelの名称は置くだけ充電や急速充電、バッテリー駆動時間の延長など、電源関係の改善をアピールするためにつけられたのだという。
スポーツなどでの利用に配慮しており、イヤーチップとは別に、スタビリティーシェルというフィンの装着もできる(取り外しもできる)。このシェルは耳にピッタリとはまる効果に加え、ケースから取り出す際に便利というメリットもある。サイズが2種類あるのもいい点だ。
例えば左手にケースを持って、親指でふたを空け、右手でフィンをつまんで取り出すといった一連の動作がスムーズ。他社の製品では、左手で持って、右手でふたを空け、右手で取り出すといった動作になる場合が多いと思うが、個人的には持ち替えがないぶんこのほうがラクな印象を持った。
次に音質だが、これが想像以上に良かった。
ボーカルがクリアで、よく聴こえる一方で、低域はしっかりとしていて安定感がある。下にアンテナ部分が出っ張るタイプだが、邪魔な感じがしないし、イヤーチップとフィンの組み合わせで安定感も上々だ。
Indy Fuel自体はアクティブ・ノイズ・キャンセル機能は持たない(1月のCESではIndy ANCという機種も参考展示されていた)が、自分に合ったサイズのチップを選べば、装着感・密閉感ともに良く、結果、ドライバーの持つ情報量の豊富さをしっかりと伝えてくれる印象を持った。
ブライアン氏に話を聞いたが、バランス感を重視しつつも低域の沈み込みを意識したチューニングになっているそうだ。ドライバーは直径6mmで従来機種と異なるものを使用している。
スカルキャンディというと、ガツンとした低域が魅力で、リズム感を重視した楽曲に合うドンシャリ目のサウンドを思い浮かべる人も多いと思う。もちろん低域の量感などはあり、ロックやEDMといった曲とよく合う。
一方で、ジャンルを問わず使える面もある。大貫妙子の「a life」のようなピアノ伴奏と一緒に歌う女性ボーカルなどは息遣いも含めて細かなニュアンスを伝えてくれるし、ストラビンスキーの「火の鳥」のようなスケールの大きなオーケストラ曲などの分離も上々。音色的には、全体にウォームな傾向だが、シンバルや鉄琴のような金属質な音の高域もピンと張って明瞭だし、音の広がりやスケール感なども申し分ない。
上に挙げたようなアコースティックな方向の曲もそつなく再生する点は、ブランドイメージをくつがえすものと言える。特に低域の重量感は保ちつつ、中高域の抜けの良さを損なわないという点は注目したいところだ。いろんなジャンルの音楽を高音質かつリーズナブルに楽しみたいという人に対して、偏見なくそのサウンドに触れてほしいとアドバイスできる仕上がりになっていると思う。
タッチ操作によるモード切替はコツが必要
アンビエンスモードも自然で、再生中の音楽の音色感の変化などはあまり意識せず、使い続けられた。
Indy Fuelを聴いていると、音楽はもちろんだが映画やラジオといったものの聞きやすさも実感できる。迫力感がありつつも明瞭なセリフなので、iPadなどでNetflixを見るといった使い方にも没頭できそうだ。
実際に使ってみるとタッチ操作の入りに少しコツが要る(特に3タップのアシスタント起動や、長押しを併用するアンビエントモードやEQの切り替え)が、ここはあまり頻繁には切り替えず、スマートフォン側のアプリ操作なども併用して、慣れていってほしいところだ。
通話時のマイク音声についても改善が加えられているとのこと。ここは先ほどのブライアン氏も触れていた部分だ。
やや帯域が狭く声が遠い印象があるものの、2つのマイクを使って周囲のノイズ(空調ファンの音など)はしっかり除去する。声に絞った集音をするので最近増えてきたウェブ会議などでも使うのも現実的ではないだろうか。別売のワイヤレス充電機と組み合われば、机の上に置いておいて必要に応じて取り出して会議に入るというスタイルもスムーズだ。
このようにIndy Fuelは多機能と音質、そしてなるべく小さなサイズのバランス感に優れた製品であり、その実現に苦心したとブライアン氏も話していた。
まずは上質感あるブラック中心に、奇抜なカラバリも期待!
最後にカラバリについて。Indy Fuelは基本がブラック、GREEN-FUNDINGでは数量限定でグレーも用意されている。スカルキャンディというとカラフルなカラーも魅力であるため、このあたりをどう考えているかも聞いてみた。
ブライアン氏によると、Indy Fuelは高級感・アップグレード感を出すため、コンサバティブなブラックとグレーの色を選択している。実はIndy Evoにはミントカラーなどがあるが、Indy Fuelでは落ち着いたトーンで安定感のある色彩が選ばれている。
なお、赤など鮮烈な印象のカラーを好むユーザーに対しては、耳掛けスタイルの「PUSH ULTRA」で、mood boostと呼ばれる限定パッケージに「STRONG RED」が用意されている。7月下旬から販売されているもので、コミック的なアートポスターを同梱している。手と手をガッチリと握り合った意匠だ。
スカルキャンディは、ストリートテイストあふれる、鮮やかなカラーの選択肢も魅力のひとつだ。米国ではIndy Evoにmood boostとして、オレンジ・ピンク・ブラックを組み合わせたWILDが追加されているが、Indy Fuelについても限定でもいいので、斬新なカラーの提供を期待したい面がある。カラバリ展開について、明確な回答は得られなかったが、記者の質問に対して、興味津々という面もあったので、何らかの展開があることを期待したい。
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August 12, 2020 at 11:00AM
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