
新型コロナウイルス感染拡大で日本は緊急事態宣言が出され、外出自粛のパニック状態になった。新型コロナの集団感染が起こったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船し、動画を配信したことで話題となった神戸大学医学部附属病院感染症内科・岩田健太郎教授の著書『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』(光文社新書)の一部を抜粋し、リスク・コミュニケーションの観点からパニックによる被害拡大を防ぐための方法を明らかにする。
「リスク・コミュニケーション」とは何か?
では、リスク・コミュニケーションとはいったいなんなのでしょうか。 リスク・コミュニケーションは、テクニカル・コミュニケーションの一種です。 テクニカル・コミュニケーションとは、科学や技術(テクノロジー)に関する情報についてのコミュニケーションです。子どもから、新しい技術や道具を扱う労働者、科学者まで、いろいろな人に活用できます。テクニカル・コミュニケーションの目的は、情報伝達、教育、あるいは説得です。 リスク・コミュニケーションは、リスクを伴う場合のテクニカル・コミュニケーションです。健康、事故防止、環境問題など、さまざまなリスクを扱います。やはり対象者はいろいろな関係者すべてになります。例えば、シートベルトに関するリスク・コミュニケーションは、シートベルトを使うすべての人(子どもを含む)に適用できます。 コミュニケーションの対象となるリスクは、ときに恐怖を惹起します。逆に、そのリスクに対して無関心だったり、気づいていないこともあります。「このようにリスクに対応しましょう」というメッセージを出しても、「そんなのムリムリ」と思ってしまい、メッセージが伝わらないこともあります。 厚生労働省は以前、日本脳炎にかからないようにするために、「外出するときは長袖、長ズボンを着用して、肌を露出しないようにしましょう」とメッセージを伝えました。 日本脳炎というのは蚊が媒介するウイルス感染症です。確かに、蚊に刺されないようにするには肌を露出しないのが好ましい、というのは事実です。しかし、日本の夏休みに、子どもに向かって「外に出るときは長袖、長ズボンにするんだよ」と言う親が、いったいどれだけいるでしょうか。「そんなのムリムリ」と思うのが普通ではないでしょうか。
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June 11, 2020 at 07:00AM
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