「The Japan COVID conundrum(日本における新型コロナの謎)」と題して、海外の政治学者が投稿した連続ツイートが話題になっている。投稿者はトロント大学のフィリップ・リプシー准教授。計13回にわたるツイートの中で、彼が指摘したのは「日本の新型コロナ対応の成功」と、それと相反するような「安倍政権の支持率下落」という、日本社会に見られる“ねじれ現象”である。
リプシー氏のツイートは、こんな指摘から始まっている。〈日本における新型コロナの謎:日本の新型コロナウイルスへの対応は批判にさらされ、安倍首相の支持率にも打撃を与えているが、日本の感染状況はむしろとても良く見える。/直近で行われた国際アンケートによると、新型コロナに対する自国の政治対応を評価する、と答えた日本人はたったの5%と23か国中最低であり、米国で「評価する」と答えた32%を遥かに下回る〉
そして、様々な国際比較のデータを示しながら、最後はこう締めている。〈安倍政権は確かに幾つかの政策ミスを犯し、国民へのコミュニケーションも万全ではなかった。しかし印象と現実とのギャップは異常なほど大きいと言わざるを得ない〉
つまり、諸外国と比べてみると、日本は「新型コロナによる犠牲者が少ない(=対応に成功している)」にもかかわらず、「政権の支持率が下落している」という、極めて珍しい国なのだという。世界を襲う“コロナ危機”の中、なぜ日本だけがそうした特殊な状況にあるのか。リプシー氏に聞いた。
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「日本はなぜ失敗したか?」を知りたがる西欧メディア
――「The Japan COVID conundrum(日本における新型コロナの謎)」に気付いたきっかけは何だったのでしょうか。
リプシー 西欧メディアから、いくつか問い合わせを受けたことがきっかけです。彼らは総じて「日本の新型コロナ対策はなぜ失敗したのか?」を知りたがっていました。しかし、データを見てみると、他国と比較しても日本の新型コロナ対策はうまくいっているように思えたのです。また、その中で、日本は「危機下において首相の支持率が下がった」、世界でも数少ない国であるとも気づき、これは非常に興味深い現象だと感じました。
――西欧メディアは、どんな点を「日本の失敗」だと捉えているのでしょうか。
リプシー 初期の報道を世界的に独占していた「ダイヤモンド・プリンセス号」の一件が、日本の新型コロナ対策を評価する際の“第一印象”になっています。ただ皮肉にも、その対応を批判していた米国では、毎日のようにダイヤモンド・プリンセス号を上回る感染者数と死者数を出す事態になってしまったわけですが。
死者数はむしろ“成功国”の水準
――諸外国と比較して、日本の新型コロナ対策はどの程度成功したと言えますか。
リプシー イタリアや米国といった、新型コロナによる犠牲者が最も多い国々と比べると、日本の死者数は遥かに少ないです。5月末時点の数字では、日本における死者数は「100万人あたり6人」程度です。これは、例えば欧州で“模範的”と称えられているフィンランド(100万人あたり50人)やドイツ(同100人)よりもずっと少なく、日本の数字はむしろ、新型コロナ対策に成功したとされるシンガポールや韓国、ニュージーランドと同じ水準です。
――なぜ日本はイタリアや米国のような危機的状況に陥ることなく、死者数を低レベルに抑えることができているのでしょうか。
リプシー 確かな理由はまだ解明されていません。BCGワクチンの効力が関係していたり、あるいはアジアでは過去に似たウイルスに接触し、免疫が多少あったというようなことがあるのかもしれません。しかし、日本政府の対策から、世界が学ぶことは多いと思います。日本は早い段階から感染者の接触追跡に注力し、クラスター感染を阻止しようと「3密を避ける」ことを徹底してきました。こうした戦略は、今後世界が前進する上で、改めて必要になるものです。
支持率が下がったのは「日本とブラジルだけ」
――そうした中でも、日本では安倍首相に対する支持率が下がり続けています。
リプシー 日本の状況は特異だと言えます。各国のリーダーの支持率は、コロナ危機を通して、そのほとんどが上昇しています。ドイツのメルケル首相の支持率は80%に達しました。また、韓国の文在寅大統領は4月の選挙で地滑り的勝利を収めています。新型コロナが猛威を振るったイタリアでさえ、コンテ首相の支持率は70%に上昇しました。大国のリーダーで支持率が下がったのは日本以外だとブラジルのボルソナロ大統領くらいです。しかし、ブラジルの感染状況は日本よりも遥かに深刻です。
――では、なぜ日本では安倍首相の支持率がこれほど下落しているのでしょうか。
リプシー 今回のコロナ危機のような非常時において、人々はリーダーの決断力と透明性を高く評価する傾向があります。しかし日本では、経済対策や緊急事態宣言といった重要な局面において、政府の意思決定が迷走し、優柔不断であるという印象を与えてしまいました。また、これは専門家のアドバイスによるものだと思いますが、日本はPCR検査を比較的「高リスク」の患者に限定したことで、「政府が何かを隠そうとしている」という疑念を抱かせてしまいました。
さらには、世界でパンデミック(爆発的感染)が起こっている最中に、検察官定年延長という危機対応と関係ない法案を取り上げたことでも、「政府は重要課題に焦点を合わせず、注意散漫だ」との印象を与えてしまったのではないでしょうか。
日本人が経験した“タイミングのズレ”
――一連のツイートの中では、日本は他国とは違うサイクルで新型コロナ対策を行っている、とも指摘されていますね。
リプシー 日本は他の主な国々よりも早い段階で新型コロナへの対応を始めました。その意味で、他国とは異なったタイミングで、異なった段階を迎えているのです。
たとえば、西欧諸国が都市封鎖などを始めようとしていた3月の時点で、日本の人々は既に「巣ごもり疲れ」の段階にありました。3月下旬の週末には、多くの人が買物に出たり、埼玉では6000人も集まるK-1の試合まで行われました。
すると、その直後から他国では感染者数が減少に転じるなか、反対に日本の感染者数は増加していったのです。このことは、多くの日本人に「日本の対応は外国と比べて貧弱だ」という印象を与えました。世界的に見れば、感染者の絶対数は少ないにも関わらず、です。
安倍政権の経済対策はどこで失敗したのか?
――3月20日~22日の3連休については「気の緩み」などと指摘する声も聞かれました。しかし、その一方で「補償なき休業要請」「補償なき自粛」に対する批判も少なくありません。日本の経済対策については、どのように評価されていますか。
リプシー 新型コロナが及ぼす経済的損失の大きさを考えると、日本も含む多くの国で、経済的補償は不十分です。ただ、日本の経済的補償はGDPの12%という水準であり、主要国に見劣りしません。米国やドイツよりも多いぐらいの水準です。しかし、イメージ戦略が失敗したのではないかと思います。
たとえば私が住んでいるカナダでは、トルドー首相がほぼ毎週テレビに出て、新型コロナと闘うための新たな経済的補償や政策を発表しています。これらは、日本の「GDPの12%」という値よりは数字的に少ないものの、首相が頻繁にコミュニケーションをとり、次々と政策を発表することによって、政府が常に新型コロナ対策に取り組み、新たな戦略を打ち出しているというイメージを広めることに成功しています。
また、カナダでは給付金もとても迅速に配布されました。カナダ緊急対応給付金(CERB)の申請はとてもシンプルで、ほぼ瞬時に振り込まれます。この簡易性が詐欺(偽の申請など)の危険性を高めるという面はありますが、危機下においては、給付金を速やかに届けることの方が、詐欺を防ぐことよりも重要だと政府が判断したのです。ちなみに、詐欺を働いた人間に対しては、確定申告の際などに、後から懲罰が与えられるという仕組みになっています。
“課題先進国”を襲ったコロナ危機
――なるほど。経済補償の規模は世界水準であるものの、そのスピードと情報発信において日本政府は躓いているのではないか、という分析ですね。
リプシー はい。しかしその一方で、日本が「コロナ失敗国」というレッテルを張られることがあっては不公平です。日本の国際的な評判が傷つくうえ、そもそも客観的なデータに基づく正確な描写ではありません。
私はいつも学生たちに、日本のことを学習し、日本から学ばなければならないと教えています。なぜなら日本はこれまでに幾度となく、そして他国より先に、重大な課題に直面してきた国だからです。たとえばバブルや金融危機、高齢化社会、中国の台頭といったものがこれに当てはまります。そして“コロナ・パンデミック”も、その一例と言えるでしょう。
日本政府には、国際社会に対して積極的にコミュニケーションをはかり、自国の政策や経験を共有し、世界がより良い対応策を導入できるよう協力していってほしいと思います。
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May 27, 2020 at 09:00AM
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