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Saturday, March 21, 2020

将来のコレクターズアイテムは確定している - GQ JAPAN

CFRPモノコックボディをもつ美しいベルリネッタ

アルファロメオ4C(クワトロ・チ)と聞いて思い出す名車は何か? アルフィスティならティーポ33/2ストラダーレ(以下ティーポ33)と言うだろう。確かにアルファロメオも4Cのスタイルはティーポ33へのオマージュだとオフィシャルに言っている。

けれども筆者はそんな大昔のモデル(1960年代末)ではなく、今から17年前のジュネーブショーに登場した1台のコンセプトカーを思い出す。その名もDIVA。たった1台が造られたのみで、そのままお蔵入り。生産車として日の目をみることはなかったが、改めて4Cと比較してみれば、そこに随分と多くの類似点があることに気づく。というか、デザインの方向性はほとんど同じで4CのプロトタイプがDIVAだったと断言してもいいくらいだ。もっともDIVAもまたティーポ33の現代版と称されていたから、4Cは“孫引き”のような存在ではあった。

何が言いたいのか。つくづくアルファロメオというブランドは不思議だなぁということだ。やると言ってやらなかったり、やらないと言って復活させてみたり。なんかそんないい加減さがとても人間的(それも正にイタリア人的)で、好き者をコーフンさせてしまうのかも、とさえ思う。フェラーリやポルシェと並ぶくらいそのエンブレムは有名だというのに、クルマはとんと売れないという摩訶不思議さと、熱烈なファン=アルフィスティが日本にはとっても多くいらっしゃるというアンバランス……。

ともあれ2013年のジュネーブで4Cがデビューしたとき、筆者はDIVAを思い出しながら、その中身の“すさまじさ”に驚きを通り越して呆れ果ててしまった。さすがはアルファロメオ、いつも期待を裏切ってくれる。

1000万円級スポーツカーではあり得ない中身

4Cの場合、その中身はいい意味での裏切りだった。1750ccの直列4気筒(それゆえクワットロ・チリンドリで4C)をミドに横置き搭載というのは常識的だったとして、問題はその中身、ボディ骨格にあった。

なんとCFRP(炭素繊維強化樹脂製)のモノコックボディを採用してきた。しかもレーシングカーやハイパーカーにのみ活用される高価なプリプレグ成型のバスタブモノコックシャシーを使っているというのだ。三千万円級のスーパーカーでも使わない(使えない)成形方法である。現在でも五千万円以上級のスーパーカーでしかお目にかかれないシロモノだ。

手作業で複雑な形状のモールド(型)に生地を貼り重ねてから高圧窯に入れてじっくり時間をかけて硬くするという恐ろしく手間のかかる手法で、それゆえとても高価になってしまう。だから販売価格の高いクルマでないと使えない。とてもじゃないけれども一千万円級の、それもある程度の量販性を覚悟したスポーツカーに使うという決断は蛮勇でしかないと驚き、呆れたのだった。

案の定、プリプレグ成型CFRPモノコックボディの生産は4Cの製造工程におけるボトルネックとなった。その高コスト体質は改まることなく、さらには排ガス規制の問題もあって欧州市場ではすでにその販売を終えている。生産終了の公式アナウンスが聞こえてくるのも、そう先の話ではなさそうだ。

これが愛のない見解、ファクトだ。そして、だからこそ4Cの価値はこれから上がるしかないとも思っている。確かに千万円級ミドシップスポーツカーとしての完成度はアルピーヌA110のほうが圧倒的に高いだろうし、ドライビングファンにおいてはロータスエキシージにやっぱり劣るし、総合的なバリューフォーマネーではポルシェケイマンのほうが上だ。

けれども4Cは、プリプレグ成型CFRPモノコックボディをもつ美しいイタリアンベルリネッタという他にない超魅力的なただ一点で、ライバルの誰よりも早く将来のコレクアーズアイテムになりうると思っている。蛮勇=他にない。絶版になれば、必ず価値は上がっていく。手に入れるなら今のうちとだけ愛をこめて言っておこう。

最終バージョンとなった4Cの乗り味とは?

デビューから7年。改めて試乗したのはファイナルバージョンとなるかも知れない4Cスパイダーイタリアだった(ひょっとして110周年仕様もあるか?? )。鮮やかなブルーはこの特別仕様専用で、ラインナップにはなかった色だ。クーペにも4Cコンペティチオーネという特別仕様があり、こちらもマットグレーの専用色をまとっていた。いずれも限定(日本国内はクーペ25台、スパイダー15台)で販売されたが当然もうソールドアウト。けれどもノーマルモデルのオーダーはまだジャパンとして受けているという。

4Cの魅力はちょっと乗っただけでも分かるし、ずっと乗ればもっと分かる。アジの薄れないガムのようだ。

カーボンファイバーの存在をダイレクトに感じさせるコクピットを目の前にすれば、否が応でも気分が盛り上がる。横幅はそれなりにあるけれど、低くタイトな室内であることは間違いない。目覚めたエンジンは多少演出過多な音質ながらスポーツカー好きにとっては好ましいサウンドを背後で奏でていた。早く走ってしまえとクルマが催促する。これもまたイタリアンスポーツの常道だ。

いまどきノンパワーのステアリングに驚くだろう。エンジンが後にあるとはいえ、切りはじめの重さといったら! 狭い室内で悪戦苦闘である。けれどもこれまたミドカーの常で動き始めたらすーっと軽くなっていく。それもごく自然な軽さ(重さ? )で、これがスポーツドライブには向いている。いわゆるリニアなステアリングフィールというやつだ。

近頃の高性能車ではあえてステアリングのパワーを軽くして腕に負担をかけずに走ることが多くなっている。それじゃツマラナイ。ドライバーもタイヤと繋がるステアリング機構のひとつだと思い知らせてくれるという意味でも、ノンパワーは有り難い、というか心から楽しい。ハンドルを切っている最中ににやけてくるなんて、クラシックカーじゃないとありえない。

4気筒ターボとDCTミッションの制御は、デビュー当初よりずいぶん良くなったとはいえ、未だに荒々しい部類に入ると思う。何をするにせよ思い切った操作をしてやらないと、クルマと息が合わなかったりする。昔ながらの気難しさもまた妙味だ、なんて思える人じゃないと付き合いきれない。少なくともドイツ勢の、あの精密な制御に慣れた人にとっては、とんでもないシロモノであろう。

操作の難しさがオーナーを飽きさせない

2020年、アルファロメオが110周年を迎える今年に乗っても、速いと感じるスポーツカーだった。特にターボが効いた直後の伸びは、身体がふわりと浮くような感覚もあってスリリングである。ボディは相当に硬く、しなやかさには欠けるので、ドライバーの思いと道路のキャラクター、パワートレインの状態(=速さ)とが三位一体で上手くハマったときのドライビングファンは格別だが、そうでなければ“難しいナァ”と、クルマの性能をけなすか自分の腕をなじるかのいずれかになる。つまり、付き合っていて飽きがこない。

今回、実は東京から京都まで4Cスパイダーで帰ってみた。以前にもいちど乗って帰ったことがあったが、そのときよりもラクだと思えた。最新のインフォテインメントなどないから退屈するかと思いきや、これがすんなり楽しく走り切った。乗り心地も悪くなく、快適ですらあった。こう見えて、実はいいGTだったのだ。4Cスパイダーの新たな魅力を見つけたと思った。たぶんボディのもっと硬い4Cクーペだとそうはいかないかもしれない。

けなしているようで褒めている。アルファロメオとはいつもそういうクルマだ。熱心なアルファロメオ乗りだってそう思っているに違いない。愛する自分のアルファロメオがパーフェクトなクルマだなんてこれっぽっちも思っちゃいない。けれども、他人の気づかない魅力を見つけては、こっそり楽しんでいる。

個人的には4Cスパイダーをナナメ後からみたスタイルがイチバン気に入っている。走りよりも何よりもそこがいい。1960年代のクラシックなミドのイタリアンベルリネッタを思い出す。

たとえばフェラーリ250LMだと言ったら、言い過ぎか?

ボクだけはそうは思わない。

文・西川 淳 写真・柳田由人 編集・iconic

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