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Friday, February 28, 2020

第126回 言葉|あぁ、だから一人はいやなんだ。|いとうあさこ - gentosha.jp

先日「ネット記事で読んだ」と友人からこんな話を聞きました。“欧米人からすると日本人はマスクをしていて、何を考えているのかわからない。日本人はサングラスをかけている欧米人が何を考えているのかわからない”んだそう。確かに外国の方に限らずですが、サングラスで目が見えないと相手が今どんな気持ちなのかわからず、不安になった経験はあります。

 

そうか、“目は口ほどにものを言う”だ。日本では「目が死んでるね」とか「目が怒ってるよ」と目の表情で人の気持ちを読む事が多い。逆に欧米の方は歯並びもものすごく気にしますし、口から得る情報は日本より多いのかもしれません。ただいくら目だ口だ言っても結局“言葉”が大事だよね、と思う事がありまして。

先日アメリカロケへ向かう道中での事。スタッフさんは先に現地入りしていて、私とAPさんの二人旅。成田を出発してアメリカ到着後、更に国内線に乗り換えての移動。トランジットの時間は約3時間。入国審査は時間かかる事もありますが、まあ3時間あれば大丈夫。なんて思っていたらとんでもなかった。係りの方が少ないのか、はたまた一気にたくさんの飛行機が到着したのか、気が遠くなるほど長蛇の列。一列だけでも長いのに、それが10列近く折り返して並んでいる。となると折り返す度に同じ皆様とすれ違う。修学旅行の女の子ちゃんたちと何度も「こんにちはぁ」と挨拶しつつ、気づけば2時間以上経過。でも列はまだまだ続く。

あれ? ヤバくない? 出発時間まではあと50分ちょっとあるけれど、ボーディングタイムまでは15分切っている。しかも今回はこの後、一度成田で預けた荷物を出して、再度預けなければならない。次の乗り場だって近いか遠いかわからない。通りすがりの職員さんにチケット見せ、「ノータイム! プリーズルックボーディングタイム。ノータイム。プリーズ!」と訴えても、低い英語力も相まって相手にしてもらえない。全然暑くないのに汗がダラダラ出てくる。

「もしダメでも今日ってまだ便ある?」と諦めかけたその時。どこからか女性の声でこんな日本語が聞こえてきた。「乗り継ぎの時間ない方! 時間ない方いますかぁ?」女性に例えるのは失礼なのですが、私が昔大好きだった漫画「マカロニほうれん荘」の“きんどーちゃん”のようなちっちゃくてぷっくりした、かわいらしいけど強そうな、そんな空港職員の方が辺りを見回しながら叫んでいた。「はいっ!」優等生さながらピンッと手を上げ彼女を呼び止め、チケットを見せた。「搭乗時刻までもう15分ないんですが!」すると“きんどーちゃん”。「ちょっと待ってて」とどこかへ。数分後戻ってくると「カウンター48番へ!」修学旅行生たちに「ごめんね! お先です!」と挨拶をし、彼女の誘導で列から出る。足早に48番カウンターへ。そこには黒人の男性職員さんが。英語はよくわからないけど、おそらくこんな感じ。

男「さっき言ってたの、この二人か。」と言いながら、男は手続きを渋る。きんどーちゃん「本当に二人だけだからさぁ。」男「まあ“きんどーちゃん”の頼みならしょうがねぇなぁ。」

彼がフッと笑って私のパスポートを受け取ってからは、怒濤の勢いで事が進む。数秒で手続きが終了すると、パスポートを受け取る私に“きんどーちゃん”が「そこの階段から一つ下に降りて左一番奥のレーンに荷物あるから!」「ありがとうございました!」手を振る“きんどーちゃん”を背に、ダッシュで階段を駆け下りる。飛行機到着してから2時間以上経っているので、とっくに荷物は出ていて一カ所にまとめられている。するとおそらく“きんどーちゃん”の部下と思われる若い金髪男子がうちらの荷物を手際よくカートに載せてくれる。

「カモン!」彼がカートを押してくれて出発しようとしたその時。「待って! 搭乗券がない!」おそらくさっきの超バタバタで、48番カウンターの人が搭乗券を抜いてそのままにした可能性大。金髪くんに言った。「ウェイト! ノーチケット! メイビーNo.48カウンター!」よくこの程度の英語で通じたなぁ。無線でどこかにそれを伝えてくれると、1分もせず“きんどーちゃん”が猛スピードで階段を降りてくる。その手にはチケット。やはり48番カウンターにあったとの事。「ありがとうございます!」再び御礼を言い、すぐさまダッシュ。

明らかに裏ルートと思われる道を金髪くんにいざなわれるがままに突き進んでいく。彼は足も長くとにかく速いが、ちんちくりんおばさん、なんとかついていく。なかなかの距離に息が切れてきた頃、無事に登場ゲート到着。その時間、“きんどーちゃん”と出会ってからなんとたったの10分ちょっと。ありがてぇ。更に金髪くんが去り際に一言。「Have a nice trip!」これです、これ! 仕事とは言え、見ず知らずのうちらの為に相当ご尽力くださった上に、なんて素敵な一言をくれるのでしょう。「さよなら!」じゃなくて「よい旅を!」。もちろん今までもそんな会話した事あったんでしょうけど、今回何故か言葉がスッと心に入ってきたと言うか。すごく嬉しかったし、幸せを感じた瞬間でした。

考えてみると英語にはそう言う一言が結構ある。似たとこで言うと「Have a nice day!」。レストランでお料理持ってきた店員さんの「Enjoy!」。くしゃみすると言われる「Bless you!」。フランス語の「Bon voyage!」や「Bon appetit!」もそう。向こうからしたら日本語に直訳した意味ほど強くなく、軽い挨拶程度なのかもですが、なんかいいな、と。「言わ なきゃ分かんないよ!」なんて痴話喧嘩は昔からよく聞きますが、言葉って大事。こんな異国の一コマで、改めて、そしてしみじみ思いました。

あ、そう言えば帰国後、留守中録画しておいたドラマを観ていたら富田靖子さん演じるおばあちゃんが出かける孫に「早うお帰り」と声かけていた。「いってらっしゃい」だけでもいいけれど、「早うお帰り」。うん、日本語も、素敵。

【本日の乾杯】
焼き胡麻豆腐。ありそうですが、意外に今まで一度もいただいたことのない一品。胡麻が濃いのでその甘さやコクはもちろんの事、焼き目の香ばしさとワサビのキリッとした辛さも加わり素晴らしい。呑兵衛で良かったと改めて思うほど、日本酒に合うなぁ。

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February 29, 2020 at 04:01AM
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